一流選手から学ぶ「勝ち癖」−マインド編−

仕事

私は会社の剣道部に所属している。部としての稽古は基本毎週土曜の午前だけであり、活動時間はそれほど長くない。現役の部員数は男女あわせて50名ほどになる大所帯で、「関東実業団剣道大会」や「全日本実業団剣道大会」で複数回優勝を収めているレベルの強豪である。私は高校生まで剣道部に在籍していたが、大学ではその他のこともやってみたいと思って剣道からは離れていた。実は現在の会社を知ったきっかけは月刊の剣道雑誌だったこともあり、迷いに迷ったが約6年のブランクを引っさげてその門を叩いたのだった。6年ぶりの稽古では両手足の血豆が潰れ、その日の風呂で悶絶したのは良い思い出だ。私も高校時代に県大会3位ぐらいの実績はあったものの、当社剣道部は全中やインターハイ、インカレで優勝経験のある選手もごろごろいて、そこには雲泥の差があった。入部当初は稽古にもついていくのがやっとだったが、平日の走り込みや素振りなどの積み重ねで体や感覚を徐々に取り戻していった。そして約10年の間活動を続けてきたが2024年の夏に現役を引退し、現在はたまに稽古に顔を出す部員といった感じだ。せっかくの土曜の午前に平日よりも早起きして剣道に向かう。しかも長年のブランクがある自分と比較し、圧倒的な実力を有する選手たちに混じって厳しい稽古に参加する。会社の同期からは「ほんとよくやるよ」と言われていたし、確かに社会人の貴重な土曜に部活に行くことがしんどいと感じることもあったが、剣道部員は本当にユーモア溢れた人が多く、加えてこの活動からの学びもたくさんあったので、辞めたいと思ったことはなかった。今回はその学びのうちの一つである「勝ち癖」について、少しばかり綴ってみたいと思う。

当社の剣道部員は強い。特に一番上位のレギュラーチーム5名に選ばれる選手は学生時代に日本一を経験している選手も多く、勝つことに慣れている。少し変わった表現になってしまったが、別の言い方だと「勝つことが当たり前」とも表現できる。なぜこんなにも強いのか、、、私はこの選手たちを間近で見て何度感じたことだろうか。自分との実力差に歯痒い思いをすることもあるが、これほどの一流選手と一緒に稽古ができる恵まれた環境の中で、この選手たちの持つ強さの秘訣や今回のテーマである「勝ち癖」について考えたことがある。勝ち癖の正体全てを言語化するのは難しいが、「マインド」と「スキル」に分解して説明したい。今回の記事ではマインドに焦点を当てて記載する。

「勝ちたい」ではなく「勝てる」と思っている

私は試合前に「この試合は勝ちたい」「この相手には負けたくない」と思うことが多い。しかし、一流選手と話しているとそういった表現ではなく、「まあ勝てるっしょ」「どうにかなるっしょ」ぐらいの感覚であることが多くポジティブ思考なのだ。その差について、「勝ちたい」というのはその裏に「負けるかもしれない」という一面が存在しているが、「勝てる」の裏には負けに対する不安が介在しない。この差は大きいと思う。自分が勝てると思い込んでいる場合は自然と勝利を手繰り寄せる手段やプロセスに意識がフォーカスされ、試合の中では常にそのチャンスを狙うことができる状態になる。勝負の世界ではメンタルの状態が結果を大きく左右するが、一流選手は自分が勝つイメージを常に持てているのだと思う。

少し話は脱線してしまうのだが、「脳は否定系を理解できない」という有名な話がある。例えば「散らかさないで」という指示を受けたとき、まず脳は「散らかった状態」を認識した後に、そのイメージを打ち消す作業を行う。同様に「負けたくない」と考えたとき、脳はまず「負け」を認識した後にそのイメージを打ち消す作業を行うことになるのだが、「負けた状態」のイメージを一度経由しているのだ。したがって、実現したい状態を言葉にするときは「〇〇する」「〇〇になる」というように、自分自身を理想状態に投影できるような表現の方がよいと言われる。一流選手というのは自然と理にかなった言動をしていることも見習うべき点だと思う。

(良い意味で)勝ち方にこだわりがない

「奴は目的のためには手段を選ばない、、、」というようなアニメや漫画でよく聞くセリフがある。いかにも悪いキャラクター彷彿とさせる表現であるが、これは「勝ち癖」を形成する一種の要素だと考えている。もちろん公明正大に正々堂々と勝負を行うことは前提の話なので、その点はご注意いただきたい。何を言っているかというと、極端な話「100対0」で勝つことも「1対0」で勝つことも同じ「勝ち」だということを理解しているということだ。自分が勝つために、チームが勝つために、ルールや道徳を逸脱しない範囲であれば徹底すべき事柄ではないだろうか。例えば「相手の弱点をつく」「守って守って最後の最後に得点する」ということに対して否定的な意見の方もいらっしゃるだろうが、対人競技の世界では立派な戦略だと思う。

ビジネスの世界においては、「キーマンを押さえる」「事前ネゴシエーション」などがその例だろうか。ビジネス提案をする際に、相手の担当者レベルが何人否定的な意見を持っていようが決裁者の合意が取れればそれで勝ちということはざらにある。また提案を行う前からすでに勝負が決まっている状態を作る事前ネゴをすべき場面だってある。このような類似シーンがたくさん詰まっている有名なドラマ「半沢直樹」はビジネスの世界における勝ち方を教えてくれる良い教材だと思う。

勝ちにこだわる際は、良い意味で「勝ち方」にこだわらないということも大切なマインドだ。

自分に必要なものを取り入れる(全ては受け入れない)

素直な心を持ち、人から受けたアドバイスを真摯に取り入れ自分の成長に活かす。これは理想的なマインドなので大切にしたいことではあるが、現実的ではない部分もある。なぜなら人それぞれ個体差や向き不向きがあるからだ。一流選手をみていると自分に必要なものを取捨選択することが上手だと思う。ただここでも注意点はある。ある程度の実力に至るまでは助言やアドバイスは素直に聞く方が良いということだ。武道の世界では「守破離」という言葉があるのだが、それぞれの意味は下記通りだ。

  • 守:基本の型や技、教えを忠実に守り、基礎を身に付ける段階
  • 破:既存の型を破り、応用や発展に向かう段階
  • 離:基本や応用から離れ、独創性や個性を発揮する段階

「守」の段階では基本的な土台を形成する時期なので、このタイミングでは変な個性を出さず何事からも吸収しようとする素直さを持って欲しい。「守」の教えはこれまでの歴史の中で研鑽されてきた基本であり王道なので、これを意識すると成長効率は上がると思う。自分に必要な情報を取捨選択するのは「破」を達成した後に「離」に向かうタイミングが好ましい。確固たる土台を持ちながら、自分に必要なものを取捨選択し、自分の個性を確立させていくことが「勝ち」を重ねていくことに繋がると思う。

ビジネスの中では、「就職活動において企業が確認しているポイント」でも述べた「T型人材」「π型人材」になっていくイメージだろうか。こう考えると、スポーツだろうがビジネスだろうが共通項というものはあるのだと思う。

今回は、私が所属している会社剣道部の一流選手から見える「勝ち癖」をマインド面から記事にしてみた。続編である「一流選手から学ぶ「勝ち癖」−スキル編−」もまとめているので、よければ読んでみて欲しい。

本記事をご拝読いただきありがとうございました。

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