一流選手から学ぶ「勝ち癖」−スキル編−

仕事

この記事は以前執筆した「一流選手から学ぶ「勝ち癖」−マインド編−」の続編である。今回は所属する会社剣道部の活動で多くの一流選手を観察してきたことを思い出しながら「勝ち癖」必要なスキルについてまとめてみたい。

自分の得意技(長所や特技)で勝負できる状況を作るスキル

まず前提として、一流選手は自分のことをよく理解できている。自分の得意・不得意や、長所・短所、自分のメンタルの状態やその日のコンディションなど、いつでも自分のことを客観的に把握している。その上で、自分の長所や特技で勝負できる状況を作ることが上手だ。このスキルは次に紹介する「相手の目線に立つスキル」も必要なのだが、相手の心理も上手く活用しながらその状況に持っていく。自分の得意な状況で勝負をするのと不得意な状況で勝負するのでは勝率は異なることは感覚的にも理解が易いと思う。逆にいうと、自分の得意とする状況でなければ勝負を仕掛けないという考えも大切だ。マインド編でも記載した通り、勝ちにこだわるときは(いい意味で)勝ち方にこだわらないことが大切だが、チャンスが来た時だけ勝負に出るというのは勝率を上げる上でとても重要だ。

自分の「得意を伸ばす」か「苦手を告白する」かといった議論はいろいろな場で耳にするが、個人的には「得意を伸ばす」≫「苦手を告白する」の優先順位だ。自分の得意や長所があればそれを軸に意思決定や戦略立案、勝負を仕掛けることができる。一方、苦手を克服して周囲と同レベルに持っていけたとしても、その状態では勝負の場やビジネスの場においても優位性を確立できない。したがって、自分の得意なことや長所を伸ばすことに注力しつつ、弱点になるような苦手があれば克服する方がよいだろう。

相手の目線に立つスキル

一流選手は自分自身に対する理解も深いことに加えて、相手のことを見て、分析して、自分の戦略に取り込むことができる。「相手の目線に立つ」ことは勝負の世界だけではなく、仕事やプライベート全般においても有用なスキルなので、もう少し具体的に言語化していきたい。相手の目線に立つということは次のような言葉で言い換えることができるのではないだろうか。

  1. 相手の目的を理解する
  2. (目的に対して)現状何をしたいのか、何が欲しいのかなどを捉える
  3. 相手の感情に寄り添った言動を心がける

仕事やプライベートにおいては、上記1〜3のステップを踏むことで友好的な人間関係の構築や円滑なコミュニケーションが実現できる。ただ、勝負の世界においては特に2と3のステップにおいて通常と逆の動きが求められるシーンがある。端的にまとめると「相手がしてほしくないこと」「相手が嫌がる」ことをするということだ。例えば相手の苦手な技を多く繰り出すことや、相手が理想とする状況を作らせないようなことが挙げられる。そうしていると、相手は焦燥感や緊張感が相まって勝負すべきでない場面で動いてくる。一流選手はこいうった隙を捉えて勝つことができる。また、わざと相手の理想状態を作らせたと見せかけて用意していた戦術で切り返すということもある。こういった駆け引きは勝負の世界では必ず必要になっていくるが、そのベースとなっているのが「相手の目線に立つ」スキルだと思う。相手のことを正確に捉えて理解できるからこそ、自分の戦略に組み込み勝利を導くことができるのだ。

自分をコントロールするスキル

ある大会の日、レギュラーチームの中軸を任されていた選手(彼も中学や社会人の全国大会で日本一を経験している超一流だ)に言われたことがある。「なんか今日リズム感が合わないなと思ったら、この動き繰り返してると自然と合ってくるんですよね〜」と。私はさすがだなと感心した。私の場合、大会の1週間前〜前日にかけては食事内容や睡眠時間をコントロールすることで調子を整えているが、当日の調子についてはコントロールすべき術を持っていなかった。というより、当日の調子はもう仕方ない!と考えていた。しかし、一流選手はどんな時でも自分のコンディションを調整してベストな状態に近づけることができるのだと悟った。一種の自己暗示に近いかもしれないが、このスキルも仕事やプライベートでも有用なスキルではないだろうか。

余談ではあるが、皆さんは抹消起源説という言葉を聞いたことがあるだろうか。アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームスとデンマークの心理学者カール・ランゲの提唱したことからジェームス・ランゲ説とも呼ばれているのだが、この説の名前は聞いたことがない方も次の名言は聞いたことあるのではないだろうか。

We don’t laugh because we’re happy    – we’re happy because we laugh.
幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだ

ウィリアムジェームズ(1842年 – 1910年)

この説に関してはさまざまな意見があるのだが、個人的に一流選手は意識的・無意識的にこの因果関係を自分でコントロールしていると感じている。先ほど述べた例でいうと「調子が悪いから思うように体が動かない」→「思うように体が動くから調子が良い」という前提に立ち、自分の体が思うように動いているような動作を決めておいて、「今日は調子がいいぞ」と脳に認識させているだ。日常生活の中でも「この所作をしたら気持ちを切り替えたことにしよう」とか「この動作をしたら自分は仕事モードだ」といった形で実践できると思うので、私も継続的に実践してみようと思う。

今回は一流選手に学ぶ「勝ち癖」のスキル編をまとめてみた。「勝つ」ということだけではなく、友好的な人間関係の構築や自分をコントロールする上でも有用な内容があったと思うので、参考にできる部分は生活に取り入れてみて欲しい。

本記事をご拝読いただきありがとうございました。

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